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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える

20100701

中長期ロードマップ小委員会での生活者ヒヤリングの報告

■中長期ロードマップに関連して、生活者に聞いてみました。そこでわかったことは……?

「中央環境審議会 地球環境部会 中長期ロードマップ小委員会」の委員を務めています。

資料や議事録はこちらにあります。
http://www.env.go.jp/council/06earth/yoshi06-11.html

まずは、さまざまな団体や企業のヒヤリングを進めることになっていたのですが、当初予定のヒヤリングが一段落したところです。

前にも書きましたが、この小委員会の第1回でヒヤリングの進め方について議論したとき、生活者にもヒヤリングする必要があるのでは?と提案しました。

===

家庭の方々は削減にしても省エネ家電を買うにしても鍵を握っているので、ぜひそこのヒアリングが必要だと思うんですが、ヒアリングのフォーマットというか形式を、これまでのやり方でやらないといけないとすると非常に聞きづらくなる。つまり、普通の主婦がこういうずらっと偉い人たちがそろったところで本当の話をするかというと、それは無理です。

なので、一つ提案ですけれども、もし家庭の声を聞くことが重要ということであれば、そのヒアリングのフォーマットを少し違うものも用意して、私がよくやるのは、もう少し話しやすい人数で、フォーカスグループ的にファシリテーターが入って、井戸端会議的に皆さんの意見を聞いて、それを後でレポートにしてこの委員会にお持ちするとか、そういった形ができますので、この場に招致して、それでヒアリングという、そのパターンでないものもできたらやっていただきたいなと思います。

===

この提案が受け入れられました! 6月11日の小委員会で、委員長よりこのような書類をいただいたのです。
http://www.env.go.jp/council/06earth/y0611-06/mat03.pdf

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会 枝廣 淳子 委員
                                       
                                       
                          中央環境審議会地球環境部会
                          中長期ロードマップ小委員会
                               委員長 西岡 秀三

生活者へのヒアリングと中長期ロードマップ小委員会への報告について(依頼)

以下の事項について、生活者へのヒアリングを実施し、中長期ロードマップ小委員会へのご報告をお願いします。

1.中長期ロードマップにおける「日々の暮らし」を中心に、生活者へのヒアリングを実施する。

2.ヒアリング実施結果をまとめ、6月30日に中長期ロードマップ小委員会において報告する。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

正式に「やってよろしい」と言ってもらったので、大いに張り切って、6月に2回、生活者ヒヤリングを実施しました。5人ずつの生活者にご協力いただいて、私が司会をしながら2時間、じっくりお話を聞きました。来ていただいたのは、仕事やNGOなどで環境問題に関わっている方々の5人と、そういう関わりは特にない方々5人です(ご協力、ありがとうございました!)

お聞きした内容は、・温暖化の意識・環境情報をどこから得ているか・家庭部門のCO2の割合や家庭内のエネルギー消費の認識・日々おこなっている温暖化対策行動・暮らしの中でおこなえそうな温暖化対策行動のアイディア・買い替えなどの費用負担をどう考えるか、何があれば実行できるか・温暖化対策行動のきっかけなどです。

昨日の中長期ロードマップ小委員会で、そのとりまとめの報告をしました。報告の概要などの資料は追って委員会のウェブサイトにアップされると思いますが、主に以下のポイントで整理し、報告をしました。

~~~~~~~~~~~~ここから報告内容~~~~~~~~~~~~~~

●「伝わっていないんだなあ」日本の中期目標の数字や、地球温暖化対策基本法案、ロードマップについてはその存在さえ知らない人がほとんどだった。(ロードマップについては見てみようとした人はいたがすぐに挫折)※情報の「伝達チャンネル」「伝え方」の問題

●「もっと生活者の話を聞いてやり方を考えなくちゃ」ロードマップに記載されている低炭素行動を実際に実行に移すかどうかは生活者次第である。生活者はどのような行動をとっているのか、何を考えているのか、何が障害になっているのか等、もっと話を聞くべきである。そうでないと、数字上の計算から買い替えや新規購入が必要だとされても、実行されない可能性がある!

●「多くの人にとって、買い替えはオプション候補にも入っていない」何かやらなくてはいけない、このままではいけないという思いは全員が抱いており、心がけ行動のほか、夜の冷房を止めるためにジェルパットを購入したり、水量を減らすためにシャワーヘッドを購入するなど、値段の張らないDIY的な取組は実行し、今後できることとしてもアイディアが出たが、給湯器や自動車などの「買い替え」はオプションとして出てこなかった。

●「低炭素行動は、温暖化対策のためというより、心地よさなど別の動機やきっかけ」「心地よさ」「自己矛盾を避けたい」といったNon-Energy Benefit(NEB)が多かった。

●「○年でモトがとれるかどうかが判断基準だという人はほとんどいなかった」光熱費の低減により何年でモトが取れるという計算で、行動のオプションを判断している人はあまりいなかった。

●「初期費用の障壁を下げないと、買い替えは起こらない!」「そもそも購入費用が高すぎて、いいことは分かっていても買えない」「ない袖は振れない」という意見が多かった。買取制度や光熱費低減などで○年でモトがとれると分かっても、「最初の費用が出せない」という意見も多い。いかに初期費用を下げるか。そのための仕組みづくりができないと、「思いはあっても手が出せない」状況が続いてしまう!

●「買い替えには、費用以外の心理的・暮らし展望上の障壁も大きい。これにどう対処するか?!」

買い替えには、費用以外のNon-Cost Barrierも大きいことがよく分かった。意識・無意識面で大きいのは、「買い替えはもったいない、買い替えることは環境にやさしくない」という思いである。特に、高関与層でこの意識は「当然」のようだった。

ほかにも、「面倒くささ」(工務店や販売店との相談ややりとりにまつわる面倒くささや、購入後のメンテナンスにまつわる面倒くささ)がブレーキになっている。また、特に賃貸の場合や持ち家でもずっとそこに住み続けることを想定していない人たちは、購入後の引っ越しを考えると「買い替えや購入はオプションではない」。また、「これからもっと値段が下がるから、いま買い替えない方がよい」という意見もあった。

●「買い替え中心のロードマップでよいのか??」ロードマップは、数字が計算できるという理由もあって、買い替えを中心に構成されているが、本当にそれでよいのだろうか? 

数値化はしにくいが、心がけ行動など(例えば新車の半分をエコカーにするというだけではなく、「○台に1台は公共交通やカーシェアリングなどへの切り替えによって使わなくなる」、又は、高性能エアコンへの買い替えだけではなく、「すだれや打ち水によってエアコンを使わない時間が増える」というような、生活者の現状の取組を汲んでの計算はできないものだろうか? 

買い替えしかとるべき行動がないかのようなロードマップでは、地道に心がけ行動をしている意識や思いのある生活者の気持ちをくじき、「これも景気対策なのね」と位置づけられ、ワガコト化されず、実行も受け入れもされない可能性があるのではないか。

~~~~~~~~~~~~報告内容ここまで~~~~~~~~~~~~~

委員の方々からは、「やってもらってよかった」「これまで聞いたことのない生の声が聞けてよかった」「いろいろはヒントが得られる」「もっと対象者を拡大してやったらよいと思う」等々、とても肯定的で前向きな感想・コメントをいただいて、ほっとしました。

この生活者ヒヤリングの準備をしていたときに、担当の環境省の方に、「これまで国は、政策の対象者、施策の実行者である生活者の意見や声を聞くことなく、政策や施策を作ってきたんですか???」と、ついツッコミを入れてしまったのですが(^^;)、今回、小さな一歩ですが、「国民の声を施策に反映する」という、当たり前のことへの第一歩が実現できて、うれしいなあ、と思っています。

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■コミュニケーション・マーケティングWGが立ち上がりました!

そして、2007年の第1号のメールニュースに、「IMS : Institute of Marketingfor Sustainability」を立ち上げ(バーチャルですが)やっていきたい、と書いたこと、現在開催中のエコ・マーケティング勉強会もそうですが、少しずつ進めているのですが、政府の中でも活動の場を作ってもらえることになりました。

中長期ロードマップを検討するために、いくつかのワーキンググループ(WG)が設置され、活動しています。「住宅・建築物WG」「自動車WG」「地域づくりWG」など。

今回新しく「コミュニケーション・マーケティングWG」が設置されたのです~。政府の伝えたいことをどう伝えるかというコミュニケーションだけではなく、「お客様(=国民)のニーズから始まる」マーケティングの視点や枠組み、方法論を施策づくりに活かしていきたい!という思いです。

政府の委員会やワーキンググループで「マーケティング」という名がついたのは初めてかも~。(^^;

このワーキンググループの座長を務めさせていただくことになりました。行動経済学や社会心理学、イノベーション普及理論の専門家の先生方にいろいろ教えていただきながら、進めていくことになります。とっても楽しみです~!

環境省だけではなく、どの省庁でも、「対象者・実行者である国民の声を聞きながら、政策・施策をつくる」という当たり前のことがデファクトになりますように!(やり方がわからない省庁の方がいらしたら、お声掛け下さい~!^^;)

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■中長期ロードマップや小委員会の今後について(発言録より)

昨日の中長期ロードマップ小委員会では、ロードマップやこの小委員会の今後の進め方についても議論されました。私の最後の発言をご紹介します。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

もしかしたら、というか、おそらくこの小委員会を超えたコメントになるかと思いますが、この小委員会がその場でなかったら、そういう場をつくってほしいなという意味を込めて、コメントします。

そもそもロードマップは目的ではないと思うんですね。このロードマップ小委員会という中でやっていくと、ロードマップが目的であるかのような形になっていて、メンタルモデルとしては「ロードマップをできるだけ練り上げて精査して、完成させて、それで伝えて、それから、じゃあ「いっせーのせ!」で行動しましょう」という、そういう流れのような感じがするんですが、きっとそうではない。

きっといつまでたっても、ロードマップを「完成」しない。みんなが納得して、みんなが「これ、いいね」というようなレベルではまとまらないんじゃないかと思っています。

温暖化対策基本法案も廃案になってどうなるかわからない。国際情勢的にもあまり動きがない。その中で、このロードマップの細かいところとか--いろいろこれから精査しないといけないところはありますけど--、ただ、それをやっているだけで実際の動きを起こさないというわけにはいかないと、個人的には思っています。こうしている間でもどんどんCO2は出ているわけですから。なので、状況が動かない中でも何をやっていくかということです。

一つは、ロードマップそのものを検討していくという意味で、ほかの委員の方からも出ていましたが、もう少し全体の中でこれを位置づけて練り上げていく必要がある。

それはエネルギー基本計画であるとか、成長戦略であるとかです。ヒヤリング先としては、たとえば経産省とか国交省とか、ほかの行政も必要だと思いますし、少なくとも再生エネルギーの見積もりが、経産省とこちらのロードマップと違っているとしたら、それは、それぞれの前提はどういうものなのか、そのあたりも含めて。環境省のこの委員会の中だけで精査して、精密度を上げるのではなくて、広い場面でやっていく必要があるというのが一つ。

もう一つは、このロードマップの次の検討事項として、実行可能性というか、実現するための検討が必要だと思います。たとえば、もうさまざまにモジュールとか項目、やるべきことというのは出ていて、それが言われてできることだったらもうやっているはずなのに、そうなっていないわけです。

たとえば「歩道自転車の走行空間の整備」とか、「LRT」とか、さまざまに項目としてやるべきことは出ている。それが今できていないのはなぜなのか。何があったらその障壁を乗り越えられるのか。そのためにはどういう仕組みがあったらいいのか。

そういったことを実際に、こういうことに直面してやろうとしている、もしくはやろうとしてうまくいかなかった。もしくはやろうとしてうまくいっているところに学んで、その実行可能性を高めるための、実現に向けての検討をやっていく必要がある。今は数字的に「何がどうなったらいくつ」という、その積み上げですが、それが本当にどういう形でできるかが見えないと動けないだろうなと思います。

先ほど言ったように、「ロードマップが完成して、みんなに伝えて、みんなに伝わったら、じゃあ始めよう」というのではなくて、もうできるところとか、たくさんあります。「ロードマップを作る」のが一つの作業だとしたら、「ロードマップを歩き始める」作業を、ぜひやっていく必要があると思うのです。

そうやってやってみた結果を、ロードマップに当然フィードバックすることができます。今回の生活者ヒヤリングは、その小さな、小さなきっかけになるとは思いますけど、少なくても、先ほど委員の方からも出ていましたが、実際に行動するために必要な知識がまだまだ足りない。

生活者ヒヤリングで出たいくつかの声を見ていると、たとえば、「こまめに電気を消すと言うけど、あまりこまめに消すと、余計に電気がかかる。だから本当は、こまめに消さないほうがいいんだ」と思っている人もいます。昔、電球がなかなかつかなかった時はそうだったと思うんですが。そういうアンラーン(unlearn)ができていない。昔入ってきた情報が、次の新しい情報に置き換わっていないという例もあります。

あと、「エアコンとこたつとどっちがいいんだろう?」という議論をしていたグループもあります。そのあたりは生活者も知りたいです。村上先生の住宅ワーキングなどで、もし可能であれば、「機械を替える、装置を替える」だけではないところも研究していただければうれしいなと思います。

生活者が知りたいことや知識をきちんと掘り下げて出していくということと、きっかけを掘り下げること。さっき大聖先生がおっしゃっていましたが、たとえば太陽光発電はもうすでにつけた人たちを集めてヒヤリングをする。高効率給湯器に買い替えた人たちを集めてヒヤリングする。それはどういうきっかけだったのか。バリアー(障壁)があったとしたら、それをどう乗り越えたのか。きっとそれはいろいろ展開できると思います。

もう一つは、先ほども言いましたが、場面ごとの働きかけです。たとえば引っ越しというのが大きなきっかけになるのだったら、引っ越しする人たちに、どういう働きかけを準備しておくか。

小学校からのプリントが、ほかのメディアよりもずっと影響力が高いということが本当だったとしたら、そういったチャンネルをどう使っていくか。そういったことは個々にやってみて、またその結果をフィードバックして、ということができると思います。

それから、先ほどの報告でも言いましたが、行動を取る上での障壁、バリアーが何かというのをもっと掘り下げていうこと。特にコスト以外のバリアーは、まだ私たちにあまりよくわかっていないので、それを掘り下げて、その障壁を下げるには何が必要か。どういう仕組みがあればいいかを考えること。

そういったことを、ロードマップの精査を続けるのと並行して、具体的にもう実行して--もしかしたらこの小委員会ではないかもしれませんが--、実行して、やってみてわかったことをまたロードマップの精査にフィードバックする。机上だけでずっとやるのではなくて、もうロードマップを歩き始めていいのではないかと思っています。

 
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