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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える

20080421

首相「地球温暖化問題に関する懇談会」第2回での発言

私が委員の1人として参加している「地球温暖化問題に関する懇談会」の第2回が洞爺湖で開催されました。今回は3人の委員がプレゼンを行うこととなっており、私は事前に事務局から「低炭素ライフスタイル」についてお話しするよう、依頼されていました。
このプレゼンでの発言記録をお伝えしますー。

※プレゼン資料は、このページ下のリンクからダウンロードしてご覧頂けます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おはようございます。枝廣でございます。資料2−1というのが私の資料になります。今日はとても気持ちの良い朝、すてきな場所で、このような会合に参加させていただけることをうれしく思っています。

私からお話しさせていただくのは、特に「低炭素ライフスタイル」についてということでいわれています。「ライフスタイル転換」とよく言われますが、「転換しましょう」と言われて、「はい、そうしましょう」と言うほど簡単なものではありません。

今回は、低炭素ライフスタイルの位置づけと、それがどういったものなのか、どうやって進めるのか、短い時間ですが、いま考えていることをお話しししていきたいと思います。

資料の2−1の後半に詳しい資料が付いておりますが、前に付いております要約版を見ながら聞いていただければと思います。

そもそも、低炭素社会にする、低炭素ライフスタイルにしていく必要性は何でしょうか。その目的は、究極的には温暖化を止めることです。そのために、このような会合も行われているわけです。

そして、そのやり方として、日本がしっかり世界の中でリーダーシップが取れる。そして国内でも、産業界の人々も縮こまるのではなくて、これをきっかけによりいきいきと、本当に競争力強く生きていける。そうするためにはどうしたらいいか? そのように考えていく必要があると思っています。

この究極の目的のスライドの右側にある日本地図は、日本からどんどんお金が逃げていくという図です。試算については参考資料をご参照いただくか、お問い合わせいただければと思いますが、このまま、日本を低炭素型社会にしていかないと、京都議定書の約束を守るために、他国から排出量を買い入れなくてはならず、どんどんと外にお金が出ていきます。それだけではなく、原油をはじめエネルギー価格がいま上がっておりますので、このままだとエネルギー代としてもどんどん、毎年何十兆円も、よけいにお金が出ていってしまいます。

ですから、単に温暖化だけではなく、エネルギー安全保障上も、低炭素社会をつくっていくということが非常に重要だと思っています。

大切なこと——そもそも論になってしまいますが、目的と手段を分けて考える必要を、もう一度確認させていただきたいと思います。

この会合で私たちは、2050年までに半減するということを目的としています。究極の目的としては、地球の吸収能力以下に排出量を抑えることですから、実際には70%ほど減らす必要があります。これは待てば待つほど大変になる。ですから早くやったほうがよいということは、ご承知のとおりだと思います。

ぜひ、具体的な手段の話に入る前に、ホップ、ステップ、ジャンプの三段跳びで、考えていきたいと思います。まず、最初のホップとして、「日本全体で総量としてどれぐらいまで下げるのか」、日本の総量の上限を出す必要があります。これは、サミットで議長としてのリーダーシップを取る上で、不可欠ではないかと思っています。

じゃあ、日本全体でこれぐらいにしましょうと決めたあと、次のステップでは、それをそれぞれの部門−−産業、民生、運輸などで、それぞれどれぐらいずつで減らすかを合意します。

それを合意した上で、それぞれの部門ごとにいちばん効くやり方でやっていきましょうと考える、これが最後のジャンプの段階です。有効なやり方は、部門によって異なります。産業界では排出量取引かもしれません。民生については炭素税かもしれません。それぞれのやり方を考えるべきです。

しかし、マスコミの報道を見ていると、何をつくるかを決める前に、ノコギリがいいか悪いかという話をしているような気がします。そうではなく、まず何をつくろうというところを合意して、進めていきたいと思っています。

民生のほうですが、下のグラフにありますように、確かに最近増えておりますから減らす必要がありますが、一方で、全体のなかで排出量の大きいのは産業部門です。一緒にやっていく必要があると思っています。

というのは、5ページにありますが、私たち市民が生活から出す二酸化炭素は、どれぐらいエネルギーを使っているかという量と、そのエネルギーの二酸化炭素排出係数を掛け合わせたものになります。ですから、省エネ等で、エネルギー消費量を減らすことは私たち一人ひとりの努力でできますが、エネルギーの排出係数は、私たちはいま電力を選べない状況ですので、私たちには変えられません。

ですから、ライフスタイルを変えればいいという問題でもないし、技術に頼ればいいという問題でもない。すべてが連携して、それぞれやっていくべきだと思っています。

6ページにありますが、二酸化炭素の排出量をこのような形で計算できます。


        GDP  エネルギー  CO2 
CO2= 人口×−−−×−−−−−×−−−−−  
       人口    GDP   エネルギー    
   (A)  (B)   (C)    (D)

日本が非常に進んでいます技術、これは省エネ技術(C)でも、再生可能エネルギー(D)でも、これで減らせる部分はもちろんありますが、それでもいま日本の排出量が増えているのは、やはりこの人口一人当たりのGDP(B)、つまりライフスタイルのところだと思っています。

これは教育、啓発、その他いろいろなやり方で変えていく必要がありますが、技術にしてもライフスタイルの転換にしても、それを推し進めるための仕組み、もしくはインセンティブ、市場が、いま日本では非常に弱いと思っています。

太陽光発電の素晴らしい技術がありながら、いま普及していないのは、まさにこのインセンティブが足りないところだと思っています。

低炭素型のライフスタイルとはどんなものかということを考えたときに、7ページにございますが、エネルギーにしても、食べ物にしても、モノにしても、お金にしても、小さな循環を大事にする。そういった生き方だと思いますし、日本人の本当に素晴らしい言葉である「もったない」を形にする。これが低炭素型のライフスタイルだと思います。

その過程で具体的には、エネルギー消費量を減らし、再生エネルギーに換えていって、残った分はオフセットする。これがごく普通にできるような形になっていけばと思っています。

その下に、具体的にどういった切り口があるかということを書いてありますが、これそれぞれについて、必要な技術、ビジネスモデルを考えることができます。

次のページに書きましたのは、では、どういうふうな心持ちを国民が持っていく必要があるかということです。

まず、自分がどれぐらい炭素を出しているか、それが世界に対してどういう影響を与えているか、それを自覚していること。そして短期的に不便だったり、ちょっとお金がかかったとしても、長期的にそれがプラスであるという、長期的な時間軸を持っていること。

そして、残念ながら温暖化はしばらくは悪化しますので、その中でも絶望しないで、あきらめないで、伝えて広げていこうというマインドを持った人。こういった人たちをどうやって増やして、広げていくかということではないかと思います。

私は、大学、大学院と心理学をやっておりましたので、まさに人の行動をどうやって変えたらいいだろうかということをずっとやっておりました。簡単に変わるものではありませんし、特に長続きする変化を起こそうとしたときには、単なる情報提供や意識啓発では十分ではありません。ですから、テクノロジーのイノベーションと同じように、ソーシャルイノベーションをしっかり研究して進めていく必要があります。

下の図に描きましたが、意識の高い人から低い人まで、いろいろな幅があります。意識啓発で、だいぶ意識が高まっていますが、おそらく何も言わなくてもやる高意識層というよりも、その真ん中の、意識はあるけれど行動につながっていない人たちを、いかに早く行動に持っていくか。これがライフスタイル側で必要なことだと思います。

それはもちろんイメージづくりや、「何をしたらいいですよ」というメニューを出すことも役に立ちます。ただ、いちばん早くたくさんの人々の行動を変えるのは、「値札を変える」ことです。たまたま安いほうを買ったら環境によかった、というふうになれば、特に意識が高くても低くても関係なく、みんなが環境にいい行動を取るようになります。

そのページにあります方程式は、人の行動が変わるときの条件をひとつ切り口として出したものです。新しい行動と古い行動を比べたとき、その変化に伴うプラスとマイナスを比べたとき、この方程式が成り立ったときに人は行動を変えます。

行動の変化が起こる条件

(新しい行動のメリット)−(古い行動のメリット)> (変化に伴うマイナス)−(変化に伴うプラス)


「レジ袋を使わない」という行動と、「レジ袋を使う」という古い行動があったときに、それを使わなくなったときにトクすれば、変える人がたくさんいます。もしくは、変えることがやりやすい。たとえばマイバックを配るなどで、マイナスを減らし、行動を増やすことができます。

この観点で考えると、さまざまなライフスタイルを変えるための取り組みができると思っています。

あと、参考資料にありますが、今回の勝手な宿題として、478人のアンケートの結果をまとめたものを載せてあります。これは環境意識の高い人たちにアンケートをしたものですが、「もっと行動するには、そして周りの人に勧めるには、日本全体で取り組むには、何があったらいいですか」ということを聞きました。

やはり経済的なインセンティブ、やった人が得をする仕組みにしてくれれば、もっと周りにも勧められるし、日本中がやっていくだろうという回答がたくさんありました。いくつか言葉を抜粋してありますので、あとで見ていただければと思います。

そういった意味で言いますと、市民の側、国民の側はもう、やる必要があるとわかっています。やりたいと思っている人がたくさんいる。そのやりやすくするきっかけやプッシュをどうやってつくっていくかだと思います。

最後に一言だけ。「低炭素ライフスタイル」といわれますが、この「低」という言葉があまりイメージ的にプラスではないので、たとえば「軽炭素」はどうでしょうね? たとえば軽食と軽装といいますね。軽く食べる、軽く装う。

それと同じように、我慢とかマイナスではなく、軽やかに生きるんだと。これが本当の新しい意味での幸せなんだと。そういったプラスのイメージで——私はプラスだと思っていますし、プラスのイメージで打ち出すことができればと思っています。以上です。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

全員の委員の発言のあと、甘利経産相と鴨下環境相の発言があり、それを受けて、2巡目で何人かの委員が発言しました(時間切れで、全員はむりでした)

甘利経産相は、先日経済産業省から発表のあった「長期エネルギー需給見通し」についてお話されました。これは、将来の温室効果ガスの総排出量と社会的負担を初めて試算したもので、企業や家庭が最先端の省エネ技術や機器を導入した「最大導入ケース」で2020年度に90年度比4%減になるが、必要な企業や家庭の負担が12年間で計約52兆円になるという発表でした。

私はもう1度発言させていただきました。(今度は短く!^^;)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

先ほど甘利大臣がおっしゃったように、コストをしっかり出していくことが、国民の覚悟を促す上でも大切だと思います。

しかし、この52兆円という試算は、このような施策を取ったときのコスト、つまりcost of action(作為のコスト)です。それだけでは十分に判断することが難しいと思います。

では、このような施策をやらなかったときに、どのようなコストがかかってくるのか? つまり、出す二酸化炭素に対し、何らかの価格がついてくる。そして、エネルギー価格が高騰していく、そのような状況で、このような施策をやらなかったときのコスト、つまりcost of inaction(無作為のコスト)を同時に出してこそ、よりバランスの取れた判断ができるのではないかと思います。

家庭への取り組みを進める上でぜひ考えていただきたいのは、家庭版ESCOのような取り組みです。たとえば、「省エネ型電球に替えたほうがよい、省エネ型の家電に替えたほうがよい、ソーラーパネルや、そういった再生可能エネルギーを導入したほうがよいとわかっていても、最初のお金が難しい」という声をよく聞きます。

ですから、そのような買い替えを融資する仕組みをつくるのです。最初の費用を融資し、その結果、省エネによって削減された電気代で返済をしていく。もしくは、ソーラーパネルであれば、ソーラー発電をした売電の料金でその融資を返済していく。そういった仕組みができれば、国としてお金を失うことなく、最初のシードマネーがあれば、買い替えや設置を勧めていくことができるでしょう。

そして、ぜひ総理にお願いしたいのは、国民の覚悟をしっかりと定める上でも、実際に私たちがどこを目指していこうとしているのか、それをはっきり出していただきたいということです。

日本は最終的に総量でどこまで削減するつもりなのか、する必要があるのか。それを明確にした上で、「じゃあ、その部分、私はここをやろう」「あなたはここをやってね」——そのような覚悟や取り組みが進むのだと思います。

〜〜〜

 
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